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2024.06.21
ゼニスのダイバーズを復活させたキーパーソンを直撃
20年間ゼニスを支え続ける裏方のボス、発見!?
編集部 マリエッタさんは2006年にゼニス入社ということですから「ゼニス一筋」ということになりますね。
マリエッタ はい。ゼニスのイメージを大きく変えたティエリー・ナタフ時代から、現在ロレックス社長のジャン-フレデリック・デュフール時代まで「あらゆるゼニス」を全部知っていますよ(笑)。
編集部 それは頼もしい。
マリエッタ ご存知のように、ゼニスはル・ロックルで非常に長い歴史を持っていますが、私がゼニスに入ってから一度も情熱を失うことなく時計を作り続けていられるのは、ゼニスというブランドの奥深さがあるからだと思います。
編集部 今回、ダイバーズウォッチが復活しましたが、ゼニスの長い歴史の中で、マリエッタさんは非常に重要な役割を果たしたのではないでしょうか。
マリエッタ もちろん、私ひとりで時計を開発しているわけではありません。2010年ごろから、つまりデュフール時代から「ゼニスの歴史」、そして「ゼニスらしさ」を大事にしていこうという動きがありました。歴史上の重要なモデル、アイコンモデルを見つめ直し現行のモデルに取り入れる。今回デファイからダイバーズが生まれたのも、その一連の流れからなのです。
編集部 デファイは1969年に誕生していますが、初代デファイは、ダイバーズだったのでしょうか?
マリエッタ いえ、違います。最初期のデファイと言われている「A3642」は、すでに多角形のケースを採用していましたが、ダイバーズではありません。その後すぐに、オレンジの回転ベゼルを搭載した本格ダイバーズの「A3648」が誕生しました。
編集部 それを今年、復刻したわけですね。
マリエッタ はい、4時位置のリューズなど、細かいディテールも再現しています。
編集部 今回発表された新作デファイのダイバーズは、2種類。復刻版の「デファイ リバイバル A3648」と現代デザインの「デファイ エクストリーム ダイバー」がありますが、どちらも600m防水という高い防水性能が与えられています。現在の基準からしても、300m防水でも十分だったのでは?
マリエッタ そこがポイントなんですね。初代ダイバーズ「A 3648」は、この時代にしては珍しくすでに600m防水を実現していたのです。なぜ600m防水だったかというと面白いストーリーがあって、600mをフィートに換算すると1968.5フィート……。
編集部 四捨五入すると、誕生年の1969年だ!
マリエッタ 確かに防水性能は200mもあれば、ダイバーズウォッチのISO基準を難なくパスすることができます。しかし我々は、ゼニスの先人達の情熱を守り抜くために、600mにする必要があったのです。コストは、かかりましたけどね。
編集部 泣、泣ける……。またゼニスが好きになってしまいました。エル・プリメロの屋根裏ストーリーに続く物語ですね。
マリエッタ はい、ゼニスこだわりのDNAが、新作デファイには詰まっているのです。
編集部 「デファイ エクストリーム ダイバー」のデザインも、非常に洗練されていますね。
マリエッタ ダイバーズウォッチの仕様目的は、はっきりしていますが、デザインや素材、そして価格帯などは、ブランドによってそれぞれ違います。ゼニスがダイバーズを作る以上は「本物の価値」をユーザーに届ける必要がありました。これまでのゼニスの歴史に恥じないモデル。つまり妥協はしないということです。
編集部 ダイバーズなのにムーブメントはエル・プリメロを搭載しているのが、ファンには堪らない。
マリエッタ はい、だからエル・プリメロが見えるように、ちゃんとシースルーバックにしてあるでしょ。600m防水でサファイアクリスタルのシースルーバックにするのは、結構大変なんですよ。ナタフ時代にも「デファイ エクストリーム」はありましたが、その時はISOのダイバーズ企画をクリアしていなかったので、そういった意味では、初代以来の、ゼニス初ダイバーズが誕生したことになります。
編集部 ゼニスにとって、新生ダイバーズ元年ですね。しかし、この2つのダイバーズ(リバイバルとエクストリーム)、どちらを選ぶか、とても悩ましいですね。本日は、ありがとうございました。
お問い合わせ:ゼニス公式サイト
取材・文/市塚忠義