2019.11.13

【ロングセラー変遷記】ブレゲが先駆けたエレガントスポーツ時計「マリーン」

高級テイストはそのままに、実用的なディテールで若者層に訴求

エレガントスポーツ時計の先駆けとして1990年に登場したブレゲ「マリーン」。特徴的なリューズガードを擁したスタイルで人気を誇るこのモデルの変遷を追う。

Original model オリジナルモデル

ドレスウォッチを基調にスポーティに仕立てた新機軸
1990年発表の初代「マリーン」。ブレゲらしいエレガントデザインをベースとしながら、ケースサイドにリューズガードを備えた新たなスポーティスタイルを提案。デザインは著名な時計デザイナー、ヨルグ・イゼック氏によるもの。18KRGモデルのほか、SS×ゴールドのコンビモデルも存在した。

 

SSケースで登場の第2世代
この年の大々的なモデルチェンジにより誕生した「マリーンⅡ」。ギヨシェ装飾入りのローマン文字盤、コインエッジを刻み込んだサンドイッチ構造ケースなどを受け継ぎつつ、時代に則した変更が加えられた。文字盤はブルーとシルバーがラインナップ。

随所が現代的スタイルへと進化
シリーズ初のSSケースを採用。直径は36㎜から39㎜へと拡大し、リューズガードが波型のデザインに。文字盤6時位置の日付表示はビッグデイトへと変更。また、防水性を100mに向上させ、シースルーバックを導入。

 

シリーズ初のクロノグラフ
2005年発表の「マリーンⅡ フライバック クロノグラフ」。シリーズ初のクロノは、フライバック式のほか、センター同軸に分積算計を備えるワンランク上のスタイルとなった。ケースは18KWG製(18KYGもあり)で、内部には自社製の自動巻きCal.583Q/1を搭載。

ボリューミーな金無垢仕様
クロノグラフの導入により、ケース径は42㎜に拡大。リューズガードは、やはり波型にデザインされた上下のプッシュボタンが兼ねる。文字盤はシルバーで、6時位置のデイトは単独表示のスタイルになった。

 

時を経ても上品さを失わぬ絶妙なスポーティスタイル

1815年、アブラアンールイ・ブレゲがフランス国王から王国海軍時計師の称号を授けられたことをその名の由来とする「マリーン」。ブレゲ発祥の伝統装備であるブレゲ針やギヨシェ文字盤など、古典的かつ上品なデザインを基調とする一方、やはりブレゲ発祥のコインエッジをサイドに刻んだ肉厚なケースにして、リューズ両側にはスポーツ時計に特徴的なガードを備える。この斬新なデザインを手がけたのが、当時気鋭のデザイナーとして売り出し中だったヨルグ・イゼック氏。1990年に発表された本作では、これら一見アンバランスな組み合わせにより、従来のドレス時計、スポーツ時計とも違う、“エレガントスポーツ”という新しいコンセプトを生み出したのである。

2000年代に入るとマリーンは大きく変貌を遂げる。ゴールド主体だったケースにはSS素材が導入され、39㎜までサイズアップ。個性となるリューズガードは波をかたどる形状となり、文字盤のギヨシェやシースルーバック越しに見えるムーブ装飾にも波模様を施した。この第2世代のマリーンは、マリン競技に興じる富裕層のニーズに合致し、一躍時代を代表する人気モデルに。クロノや複雑機構などのバリエーションも年々拡大していった。

そして昨年、ついに第3世代が登場。新たにチタンケースを取り入れ、細身のベゼル、フラットなラグ、装飾性を排した文字盤など、大胆なデザイン変更を加えた新作は、ほどよくスポーティな要素を残しつつも、初代のシンプルさに立ち返った感がある。マリーンの新章はまだ始まったばかりである。

 

精悍なブラックが追加
2004年のブルー文字盤に続き、ブラック文字盤を追加(クロノのブラック文字盤は2007年に登場)。ブルーとシルバー同様、センター部分には精緻なウェーブ装飾が施され、よりクールで精悍な雰囲気を醸し出すようになった。自動巻きCal.517GG搭載。SSケース。径39㎜。

時計全体をモノトーンで統一
文字盤カラーがブラックとなった以外に、大きなデザイン変更はない。文字盤ベースに合わせ、6時位置のビッグデイトもブラック地に白抜き数字となり、ストラップにもブラックラバーを取り入れている。

 

大胆に変身を遂げた第3世代
2018年に登場した第3世代の「マリーン5517」。前年に発表の複雑時計「マリーン エクアシオン マルシャント」をベースに、文字盤&ケースデザインが大胆に生まれ変わった。自動巻き。径40㎜。チタンケース。アリゲーターストラップ。10気圧防水。188万円。

ケース・文字盤とも一新
ケース素材にチタンを採用し、ケース直径が40㎜に拡大。ベゼルが細身となり、上下のラグがフラットなプレートタイプとなった。チタンケースの文字盤は、サンバースト仕上げのスレートグレーを組み合わせた。

 

オールチタンの最新作
「マリーン 5517」のチタンケース&ブレスバージョンが今年登場。外装を軽量かつ硬質なチタン素材に統一したことで機動性が増し、金属アレルギーのリスクも軽減された。自動巻きCal.777A搭載。径40㎜。10気圧防水。予価216万円。お問い合わせ先:ブレゲ ブティック銀座

手作業で仕上げたチタンブレス
ブレス素材にチタンを採用した以外に大きな変更はなし。チタン製ブレスはコマのひとつひとつに熟練の職人がサテン仕上げを施し、サテン&ポリッシュを使い分けたケースとの絶妙なコントラストを生み出す。

 

[時計Begin 2019 AUTUMNの記事を再構成]
文/岡崎隆奈 構成/市塚忠義