- 時計Begin TOP
- ニュース
- オーデマ ピゲとKAWS(カウズ)の新境地
2024.11.20
オーデマ ピゲとKAWS(カウズ)の新境地
決して真似できないコラボレーションの熱意

「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン“コンパニオン”」。手巻き。径43㎜。チタンケース。インターチェンジャブルのテキスタイル加工ライトグレーカーフスキンレザーストラップ。世界限定250本。10気圧防水。価格は要問い合わせ。
1875年創業のオーデマ ピゲは、今もなお、オーデマ家とピゲ家による創業家経営を続けている時計業界では数少ない完全独立ブランドで、来年創業150周年を迎える。“独立”していることのメリットのひとつは、大人の事情に縛られることなく、思いっきり時計製作を楽しめること。こうした自由な発想と創造力は、新しい時計を作るには絶対に欠かせない原動力だ。
そんなオーデマ ピゲは、コラボレーションに選ぶパートナーも実にユニーク。最近でいえば、ギタリストのジョン・メイヤーであり、ファッションデザイナーのマシュー・ウイリアムズ。感度の高いアーティスト達とのコラボレーションウォッチは極めて斬新で、時計業界の重鎮であるにもかかわらず、「オーデマ ピゲは、何をするか、わからない」という予測不能なところが、ファンには堪らない緊張感になっている。
今回発表された新たなコラボレーションモデルも、なかなかウィットに富んだ内容。「X」の目をしたコンパニオンのキャラクターで有名な、KAWS(カウズ)との共同製作である。オーデマ ピゲのコラボレーションが話題になるのは、人選の意外性に加えて、完全にそのパートナーとの世界観を「ゼロ」から作り上げるからだ。
コラボレーション時計の多くは、その冠を掲げただけのものが多く、文字盤に互いのブランドのWネーム、もしくは既存のモデルの「仕様違い」で止まることが、ほとんどだ。しかし、オーデマ ピゲの場合、既存モデルには全く前例のない、新たなオンリーワンを作り上げる。それは今回の新作コラボを見ても、明らかだ。
ダイアルのど真ん中には、あのキャラクターが、チタン製のミニチュアの3Dで鎮座。その表情は、時計のガラス風防に内側から顔と手を押し当てて、外の世界を覗き込もうとしているかのよう。通常、時計はこちら側(所有者)が覗き込むものだが、この“見られている”感覚は、なんとも不思議。
そのコンパニオンキャラクターに、更なる躍動感を与えているのが、顔の下のトゥールビヨン。まるでキャラクターの心臓であるかのように(実際に時計の心臓部ではあるが……)、心地よいビートで時を刻みながら、回転運動を続けている。
このキャラクターの強烈な存在感に、思わず時を忘れてしまうが、実際にこの時計のダイアルには、時分針がない。一見すると、ダイアルはキャラクターのみに見えるが、そこはスイスの名門、オーデマ ピゲ。時計のメカニズムも、かなり斬新なものである。
よく見ると、ダイアル外周には2種類の三角マーカーがあり、これがそれぞれ時針、分針の役割を果たしている。この2つの三角は、重なっている2つのホイールに取り付けられており、この2つのホイールはカナから動力が供給され、ローラーによってその動きが保持されている。2つのマーカーは同軸にあるように見えるが、そのポジションは微妙にズラされており、分針が時針を追い越す時も、ぶつかることはない。
このペリフェラル式ムーブメントは、オーデマ ピゲが新たに開発した手巻きキャリバー2979。このムーブメントはケースバックから見ても、かなり個性的。ブラックPVDチタン製のブリッジには、 KAWSのキャラクターにインスパイアされたパデッドデザインが取り入れられ、輪列のブリッジの下には、巻き上げ時に香箱芯を回転させるラチェットホイールが。そこには KAWS の象徴的な「X」を思わせるクロスが描かれている。
この「X」のクロスは、ロイヤル オークを象徴する8角形ベゼルに取り付けられた6角形のビスにもさり気なくデザインされており、ケースバックのフレーム部分にもKAWSのサインとともに刻まれている。
完成まで2年を費やした世界限定250本のコラボレーションウォッチは、オーデマ ピゲにとってもKAWSにとっても、その歴史に刻まれる代表作になることは間違いないだろう。
お問い合わせ:オーデマ ピゲ公式サイト
文・構成/市塚忠義