2022.09.12

世界で最も愛される四角い時計【ザ・ファーストモデル 第5回 タグ・ホイヤー「モナコ」】

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ヒットするのが難しいスクエア時計で唯一成功したのが、モナコ

腕時計は大きく分類すれば、丸型と角型。角型ケースのモデル自体がレアだが、角型の定番時計モデルとして名前が上がるのは、大半が「レクタンギュラー」。つまり縦長の角型のことで、カルティエのタンクや、ジャガー・ルクルトのレベルソなどが、これに該当する。一方、タグ・ホイヤーのモナコは、角型ケースではあるものの、厳密にいうと正方形の「スクエアケース」。このスクエアケースで、時計業界で大きな成功を収めたモデルは、実はほとんどなく、タグ・ホイヤーのモナコが唯一の存在と言っても決して過言ではない。

1969年、オリジナルのモナコ。深いブルーのダイヤルには、バーインデックスが「水平」に取り付けられ、より個性的な顔つきに。

なぜ、タグ・ホイヤーのモナコは、これほど有名になることができたのか。そのファーストモデルから、おさらいしていこう。オリジナルモナコが誕生したのは、1969年。この年は、時計業界にとって、大きなターニングポイントとなった年だ。1960年代後半、すでに自動巻きの腕時計は定着していたが、クロノグラフにおいては、まだ自動巻きモデルがなかった。どのブランドが一番早く、自動巻きクロノグラフを開発するのか。そんな期待と憶測とがないまぜになる中、ホイヤー(タグ・ホイヤー)がブライトリングなど他の時計ブランドと共同開発して完成させたのが、自動巻きクロノグラフのキャリバー11である。1969年、ホイヤーはモナコに、ブライトリングはクロノマチックに、この世界初のムーブメントを搭載して、世界に発信した。

ホイヤー、ブライトリング、ハミルトン-ビューレン、デュボア・デプラの4社によって共同開発されたクロノマチック(キャリバー11)。既存の自動巻きにクロノグラフ・モジュールを重ねるという構造は、世界初。

自動巻き……、つまり手で巻く必要のないことをアピールするため、このムーブメントのリューズは、左側にある。それだけでも十分アヴァンギャルドであったが、さらに見るものをアッと言わせたのが、スクエア型のケースだった。プッシュボタンのあるクロノグラフは、角型ケースの場合、防水性を持たせることが難しい。モナコは、世界で初めて防水性能を装備した角型クロノグラフでもあった。これだけ画期的な腕時計、さぞかしヒットしたと思いきや「最初はまったく売れなかったね。やはりスクエアケースが、当時は斬新すぎたんだ」と、当時CEOのジャック・ホイヤー氏は、後のインタビューで語っている。

裏蓋と一体化したミドルケース。そこにパッキンを挟んでベゼル一体型のケースカバーを被せるという特殊構造で、角型で初めて優れた防水性能も獲得。

モナコが有名になったきっかけは、なんだったのか。それは本物のレーサー達であった。ジャッキー・イクスやニキ・ラウダなど、当時活躍していたレーサー達がこぞってタグ・ホイヤーのクロノグラフを着用。さらに、伝説のドライバー達の姿を描いた1971年の映画『栄光のル・マン』で、スティーブ・マックイーンがモナコをつけていたことが、大きな話題となった。

映画の主演を務めるにあたり、クレイジー・スイスの名で知られる伝説のドライバー、ジョー・シフェールをアドバイザーに迎える。彼がタグ・ホイヤーを愛用していたことが、映画でのモナコ着用につながった。

その後のクオーツショックで短命に終わったモナコであったが、1998年に2カウンターの復刻モデルとして再スタートを切る。2015年には、伝説の左リューズタイプも復活を果たした。現在では、最新の自社製クロノグラフ・ムーブメント、キャリバー ホイヤー 02搭載モデルを中心に、さまざまな派生モデルや限定モデルを展開するモナコ。時代が変わっても、モナコの代わりになる時計は、いまだに存在しないのである。

オリジナルの左リューズを踏襲する「タグ・ホイヤー モナコ」。CAW211P.FC6356。搭載するムーブメントは、現在のキャリバー11。ケース幅39㎜。自動巻き。SSケース。レザーストラップ。100m防水。82万5000円。

ガルフブランドのレーシングカラーを、文字盤で大胆に表現した最新の限定モデル「タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 ガルフスペシャルエディション」。 CBL2115.FC6494。ケース幅39㎜。自動巻き。SSケース。レザーストラップ。100m防水。83万6000円。

専用の3連ブレスレットを装備した「タグ・ホイヤー モナコ」。CBL2113.BA0644。自社製ムーブメント、キャリバー ホイヤー02搭載。ケース幅39㎜。自動巻き。SSケース&ブレスレット。100m防水。83万6000円。

問い合わせ:LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー

(文・構成/市塚忠義)

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