2022.09.22

お洒落な紳士のために考案された元祖ラグスポ【ザ・ファーストモデル 第7回 ジャガー・ルクルト「レベルソ」】

クルッと反転させれば、満足感も二倍

角形のケースは、極めてクラシック。しかし、1931年にレベルソが誕生した時、このケースの仕組みに誰しもが衝撃を受けた。ケースを親指で押してスライドさせ、文字盤もろとも反転させるなど、普通では思いつかない。レベルソとはラテン語で「回転する」という意味を持つ。レベルソ誕生のきっかけは、ポロ競技中の激しい接触で時計のガラスが割れてしまうことを防げないかと考えたことだった。

1931年、初代レベルソ。ブランド名は入らず、文字盤には「REVERSO」のみ。レイルウェイのインデックス&2針、がクラシック・レベルソ王道のスタイルだ。

時計のガラスが割れるなんて頻繁には起こらないだろうと思うかもしれない。しかし、現在主流のサファイアクリスタルはおろか、アクリルガラスすらない時代(アクリルガラスが登場するのは1940年代に入ってから)。時計の風防は、ただのガラスだった。だったら、ポロ競技中は時計を外せば良いのでは? だが、そこは紳士が嗜むスポーツ。当時最先端の「腕時計」をつけて競技に臨むことが粋なファッションであり、周囲へのアピールポイントでもあった。

1930年代、インドでポロ競技を楽しむイギリス人たち。レベルソはインド駐在のイギリス軍将校から依頼を受けて誕生した、というのが定説だ。

そういった意味では、レベルソは現在時計業界を席巻している「ラグジュアリースポーツ=ラグスポ」時計の原点。高級感とタフな外装を併せ持つ、生まれながらの高級スポーツウォッチであった。角形ケースの意外性に加えて、それを反転させる仕草がカッコいいと評判に。当時の広告ポスターを見ても、この一連の動きを順を追って紹介しているものが多く見つかる。

レベルソの反転ケースの構造は、1931年3月4日に設計者のルネ・アルフレッド・ショボーによってパリの特許庁に申請されている。

クオーツショックの後、いったん市場から姿を消すが1985年には復活。機械式時計復活のキーパーソン、故ギュンター・ブリュームラインによって、レベルソは同社のアイコンに位置付けられリニューアルを果たした。反転ケースの設計を見直し、剛性を高めて操作性も向上させた。レベルソはケースを構成するパーツだけでも50を超える。レベルソほど有名な時計なのに、偽物がそれほど出回らないのは、この複雑なケースを安価に作ることなど、不可能だからだ。

ケース構造ばかりが取り上げられることが多いレベルソだが、中のムーブメントも秀逸。写真は、1998年から手巻きの「クラシック」を支えてきたレベルソの基幹キャリバー822。

現在レベルソには、さまざまは派生モデルが生まれ一大ファミリーに成長。反転したケースの裏にエングレービングを施し、記念日を祝う人も多い。また反転して現れるもう一つの「顔」で、2つ目の時間帯を表示するデュオモデルも人気だ。絶対的なアイコンケースは、他にはない機能性を生かして、まだまだ進化していくことだろう。

裏面で24時間昼夜表示付きの第2時間帯を表示する「レベルソ・クラシック・ラージ・デュオ・スモールセコンド」。手巻き。ケース47×28.3㎜。SSケース。レザーストラップ。152万2400円。

1931年初代レベルソのデザインを色濃く継承する「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」。手巻き。ケース47×28.3㎜。SSケース。レザーストラップ。160万1600円。

問い合わせ:ジャガールクルト

Tel:0120-79-1833

(文・構成/市塚忠義)

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