2022.10.03

後にも先にも三角形の腕時計はコレだけ!【ザ・ファーストモデル ♯08 ハミルトン「ベンチュラ」】

腕時計を三角形にできるなんて!

「なんていう、時計ですか?」。ベンチュラのオーナーなら、おそらく一度は聞かれたことがあるだろう。いま見ても斬新なこの個性的なデザインが、60年以上前に完成していたというのが、驚きである。ハミルトンのベンチュラは1957年にファーストモデルが誕生。強烈な外観をまとってリリースされたのには、理由がある。それはこの時計が、電池式駆動を実現した、世界初のエレクトリックウォッチであったこと。電磁コイルを動力源とするそれまでになかった腕時計には、やはりそれまでに見たことのない、とんがったデザインが相応しい。

1957年のオリジナル「ベンチュラ」。小型電池を動力とするキャリバー、ハミルトン500を搭載していた。

精度や、正確性を求める時計において、左右非対称というデザイン大胆なデザインを採用したのは、リチャード・アービブ。アメ車キャデラックのデザインでも有名な彼は、ミッドセンチュリー期のアメリカ的な力強さを、ベンチュラでも表現した。

現行モデルのベンチュラ。ダイヤル中央のギザギザのマークはオリジナルから変わらない意匠。

画期的な機構とデザインが話題を呼び、発売と同時に驚異的セールスを記録。その人気を、さらに決定付けたのが、エルヴィス・プレスリーだ。トライアングルケースに惚れ込んだロックンロールの神は、ベンチュラの愛用者として有名。1961年の映画『ブルー・ハワイ』の中でも、ベンチュラの姿はしっかりと確認できる。

映画『ブルー・ハワイ』のバックステージショット。腕にはベンチュラがしっかりと。 ©️Elvis Presley – Backstage Blue Hawaii – Copyright ABG 2018_Print

開発10年間を費やした「ベンチュラ」は、今日のクォーツ時計の先駆けである。1950年代の自由で壮大な時代背景の後押しもあり、ハミルトンはこの後もヒットを連発。世界初の自動巻きクロノグラフ「キャリバー11」や、LEDデジタル時計「ハミルトン パルサー」は、時計好きなら誰もが知る傑作だ。

「ベンチュラ」と並ぶハミルトンの傑作「ハミルトン パルサー」。これは1973年製の第二世代で、通称P2と呼ばれるモデル。

その後、「ベンチュラ」は休眠期間に入ったが、ハミルトンの拠点がアメリカからスイスに移り、スウォッチ グループ傘下で新体制に入ると、1988年にクォーツ・ムーブメントを搭載して復活。2000年代に入ると、映画『メン・イン・ブラック2』で登場し、再び話題に。クロノグラフや、自動巻きモデル、ビッグケースのXXLなど、現在ではハミルトンの一大コレクションを形成している。

「ベンチュラ クォーツ」。H24411732。ケース横32.3×縦50.3㎜。SSケース。カウレザーストラップ。5気圧防水。11万8800円。

問い合わせ:ハミルトン

(文・構成/市塚忠義)

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