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2020.09.07
各社売上は右肩上がり。ハイスペック新時代に ―2000年代前期ー【歴代時計グランプリの「今」】
2000年というミレニアムを迎えると、時計業界はさらなる活気を取り戻す。それはちょっとしたお祭り騒ぎ。奇想天外なモデルの登場に、時計ファンの心も躍った。
普通の時計ではもう満足できない!?
2000年代に入ると、時計業界はちょっとしたプチバブル時代に突入。出せば売れる、高くても売れる。各社ともセールスは好調で、イベントや広告費などに莫大な予算を掛けるようになった。この頃の雑誌が、めちゃくちゃ分厚いのも納得。お金になると確信した投資家が、次から次へと現れた。するとユーザー達もますます貪欲に。もっと良い時計はないのか……。作る側もそれに応えようと、数々のハイスペックな新モデルが登場する。
その中でもひときわ異彩を放ったのが、ユリス・ナルダンの「フリーク」。時計の輪列が分針の役割も果たし、ムーブメント自体が回転して時刻を示すという驚愕のメカニズムは、簡単に理解できるものではなかった。またこのモデルは、業界初のシリコン採用モデルとしても有名。2つのガンギ車の素材がシリコン製なのだが、当時は、まさかシリコン素材が、今ほどメジャーになるとは、誰も考えていなかった。
そしてもう一本、この時代を象徴するハイスペックな時計といえば、セイコーの「スプリングドライブ」である。ゼンマイを動力とする機械式の良さと、クオーツの高い精度の両方を併せ持つ画期的モデルは、日本人にしか作れないと世界から絶賛された。スプリングドライブを搭載し、2002年に発売されたクレドールが、この年の時計グランプリを受賞している。
共通するのは、難解なメカニズムや風貌が、決して奇を衒ったものではなかったということ。当時は珍しさばかりが注目されたが、この2本は未来の時計のあり方を本気で模索した結果であり、その証拠にどちらのモデルも着々と進化を重ね、未だ第一線で活躍するモデルとして君臨している。
今買える後継モデル!
ULY SSE NA R DIN
ユリス・ナルダンフリーク X
ココが進化
リューズなしからリューズありに!
「シリコン化」はここから始まった

カーボンで軽量化
同社の基幹キャリバーUN118をベースに、フリークをリューズ付きのシンプルなムーブに再設計。ケース素材は航空機材の端材を用いた特許取得のマーブル模様。自動巻き。径43㎜。カーボニウム®ケース。アリゲーターストラップ。50m防水。278万円。問い合わせ:ソーウインド ジャパン
2001年 グランプリモデル
ULYSSE NARDIN(ユリス・ナルダン)
フリーク
受賞の理由
ムーブ自体が回転し時刻表示する革新機構

天才が生み出した常識を覆す腕時計
21世紀最初の開催として大いに期待されたバーゼル。その会場の話題を独占したのがフリーク。当時、ラ・ショー・ド・フォン時計博物館の館長も務めていた天才ルードヴィッヒ・エクスリン氏のアイデアをユリス・ナルダンが実現。
新時代の最新モデル!
グランドセイコー
スプリングドライブ 5 DAYS
ココが進化
ツインバレルの搭載でパワリザが約5日に!
18年ぶりの大改良でパワリザが約2倍に

グランドセイコーの生誕60年を記念
歯車の輪列をムーブメント中心近くで展開。その上から1枚の板で多くの軸を支える「ワンピースセンターブリッジ」の採用で、ダイバーズ規格に応える耐衝撃性を獲得。世界限定700本。径46.9㎜。ブライトチタンケース&ブレスレット。600m飽和潜水用防水。115万円。8月発売予定(変更の可能性あり)。問い合わせ:グランドセイコー 専用ダイヤル
2002年 グランプリモデル
CREDOR(クレドール)
スプリングドライブ
受賞の理由
機械式とクオーツのいいとこ取りを実現

時計の理想を追求したセイコーの執念の勝利
スプリングドライブは1998年のバーゼルで技術発表され、翌年限定モデルが登場。さらに改良し、2002年に本格デビューとなった。この時、クレドールが搭載したキャリバーは「7R88」。世界初のクオーツやキネティックに続く革新モデルだった。
改良を加えた新キャリバー
スプリングドライブの新キャリバー「9RA5」。 装着感向上のためリューズ位置を裏蓋側に 寄せて低重心化し、厚さも5 ㎜に薄型化 された。限られたスペースの中で最大限の 高トルクや持続時間を実現するため、サイ ズの違う2 つの香箱を搭載している。
[時計Begin 2020 SUMMERの記事を再構成]